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最高裁判所第一小法廷 昭和49年(行ツ)41号 判決

広島市小町三番三〇号

上告人

株式会社 太陽商会

右代表者代表取締役

吉田義之

右訴訟代理人弁護士

内堀正治

広島市上八丁堀三番一九号

被上告人

広島東税務署長 多田慶二

右指定代理人

枝松宏

右当事者間の広島高等裁判所昭和四六年(行コ)第一一号行政処分取消請求事件について、同裁判所が昭和四九年三月一二日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告は棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人内堀正治の上告理由について。

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の尊権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものであつて、採用するに足りない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 団藤重光 裁判官 藤林益三 裁判官 下田武三 裁判官 岸盛一 裁判官 岸上康夫)

(昭和四九年(行ツ)第四一号 上告人 株式会社太陽商会)

上告代理人内堀正治の上告理由

原判決の判断に判決に影響をおよぼすことが明らかな採証法則の違背がある。

一、原判決は上告人が主張する本件係争年度(昭和四〇年六月一日から同四一年五月三一日まで)における双葉商会こと桜井健市からの商品仕入金九〇〇万八八四七円を否定した一審判決の判決理由をそのまま援用し、右仕入れを否定しているが、右認定は証拠の解釈を誤つたもので、採証法則に違背したものである。

二、原審は証拠の判断を誤り桜井健市は実在しないものと認定している。

その理由とするところは、取引額が多額であり、仕入品がホンダの純正品であるか検査の要もあり、代金支払いの点も考慮しなければならないとして、上告人代表者の供述を排斥しているが、上告人はその都度部品を調査して購入していたのであり、支払いについて上告人が心配する必要はないのであり、右のような理由で桜井の実在を否定することはできない。

また証人池川茂雄、同寺沢英雄の証言により桜井健市の実在は優に認められるに拘らず、同人が経営者であるか使用人であるか、双葉商会の所在等についても曖昧な点があるとしてその証言を排斥しているが、元来桜井健市は上告人代表者が述べる如く、ホンダの社外品(純正部品を正規ルートによらず販売しているもの)を扱つているもので類をもつて集つており、経営者の如く使用人の如く正規の会計員の如き対外的身分を持つものでなく、またその経営場所も転々としてホンダの目を逃れようとしているのであり、正確に掴み難いところに本質があるのである。

三、原審は証拠の判断を誤り上告人挙示の仕入関係資料をたやすく排斥している。

上告人は前記仕入れを立証する資料として甲第一〇号証買掛帳、甲第九号証納品書を提出している。然しそのうち買掛帳については、上告人の昭和三六年五月三一日現在の棚卸表の記載と順序を逆にして一部が符合していることを理由としてその証拠力を排斥しているが、之は上告人代表者が述べる如く商品棚の順序に従つたまでのことで右の一事を以てその証拠力を排斥することは違法である。また納品書についても、その頭部が切断されていること、オリオンパーツ商会の納品書と型式が同一であること等を理由として、上告人がオリオン、パーツからの過年度の納品書を利用した疑いが強いと認定しているが、之として証拠の判断を誤つたと言わざるを得ない。即ちかかる納品書は各店によつて異るものであるとの前提は成立し得ないのであり、型式が同一と言つても直ちに同じ店のものとは言えないのであり、桜井健市が他から入手し、その上部を切断して使用する可能性も極めて強いのである。而して更に上告人が過年度において該納品書と同様の仕入れをしたとの立証はされていないのであり、軽々に上告人の証拠を排斥したとのそしりは免れない。更に甲第一六号証と綜合して調査すると、該納品書のうちには、過年度には存在しないところの部品が記載されていること明らかであり、之を以て過年度の納品書とすることは明らかな採証法則違背である。

右のとおりであるから原判決は違法であり破棄せらるべきものと思料する。

以上

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